一般社団法人 アーツシード京都 代表理事 あごう さとし




―まずはじめに、こちらはどういった法人になるのでしょうか?
「THEATRE E9 KYOTO」という劇場の運営と、その劇場の貸館業を主に行っています。他にも、 劇場のコンサルティングや行政、民間企業と一体となってアートイベントの企画・制作を行っています。

―なるほど。 「THEATRE E9 KYOTO」 が完成した当時、テレビで拝見したような記憶があります。「街に劇場が出来る」というのは、珍しいというか馴染みがありません。どのような経緯や目的でこちらの劇場は作られたのでしょうか?
2015年から2017年の間に、京都にあった小さな劇場が5か所閉鎖されたんですね。そうなると、京都にある収容人数200名以下の正式な劇場は、ロームシアターのノースホール一か所だけになってしまうんです。私も、その5か所うちの一つの劇場の責任者をやっていたんですが、「芸術文化都市を掲げる京都から小劇場が無くなる。」と、いうことに強烈な危機感を覚えました。このまま何もしなければ、次世代を担う若者の表現の場が無くなってしまい、人が育たたないどころか、表現の場を求めて他の地域へ人材が流出してしまいます。「表現を志す若者の表現の場を守る。」そんな思いで、この劇場を作りました。

―5か所の劇場の閉鎖。わずか2年間の間にそんなことがあったんですね。こちらの地域を選ばれたのには、何か理由があるのでしょうか?
私が劇場を作ると決めてから、私がイメージする物件を約1年間探し回りましたが巡り合うことが出来ませんでした。そんな物件探しに行き詰っていた2016年夏に京都市内の不動産会社の経営者の方からこちらの物件を紹介して頂いたんです。その後、地域の方や企業の支援を頂いて2019年6月に開館しました。

―なるほど。それでは、地域の皆様とはどのような関わり方をされていますか?
私どもの劇場が、一般の皆様向けに年会費3万円で、THEATRE E9 KYOTOの公演が原則見放題という会員制度があるんですが、東九条と崇仁エリアにお住まいの方とお勤めの方には、年会費12,000円でご利用頂けます。また、年に一回地域の子供たちと私たちで「映画製作」を行っています。このように、地域の皆様に作品や演劇を見て頂いたり、作品や演劇そのものを創るということを通して、「表現する」ということに触れて頂く、そんな機会を可能な限り作っています。

―なるほど。僕は、正直「舞台芸術」とは無縁の生活を送ってきたよくいるビジネスマンです。ビジネスマンに関わらず、本当に僕のような方は多いと思います。その辺りについては、どのようにお考えでしょうか?
一般の皆様が現代芸術にアクセスする機会が極端に少ないとは感じています。日々の暮らしと照らし合わせながら関りを持てるような機会を提供することで少しづつでも芸術が浸透していけばと思っています。

―それは、ビジネスマンとの関りという点にフォーカスした場合、具体的にどのようなことになるのでしょうか?「ビジネスマン×現代芸術」これについての事例があれば是非教えて頂きたいです。
「表現」というと何か特別な印象を持たれる方がいらっしゃるかもしれませんが、日常生活で家庭においても職場においても、意識せずとも皆さんは「表現」をされています。とりわけその「表現」を人の心を動かすレベルで行うことを求められる方がいらっしゃいます。ビジネスパーソンと演劇の創作上演をすることで実践的に体験して頂いています。

―興味深いですね。どのようなことをやるのでしょうか?
ご自身のストーリーを語ってもらうんですね。自分のストーリーを表現するにあたり、まずは、自分を「作品化」するんですね。自分を作品化することで、自分自身が「公的なもの」になり「客体化」することが出来るんです。そうなると、自分の言葉を客体化された自分を通して他の皆様に伝えるにはどうすればいいのか?ということを考えることが出来るようになり、さらにそれをどう表現すれば人の心を動かすことが出来るのかということを考えるようになります。そして、それを演技を通して表現するということを体験してもらうんです。

―なるほど。企業研修でも取り入れられそうな内容ですね。そう考えると「芸術」と「ビジネス」の間の距離は案外近いかもしれませんね。
「芸術」や「表現」といった、クリエイティブなことに触れることが現状打破のキッカケになる。そんなことも往々にしてあると考えています。新しい価値の創造に取り組まれているビジネスマンの皆様には、是非、「芸術」や「表現」というものに触れて頂きたいなと考えています。