株式会社 革靴をはいた猫 代表取締役 魚見 航大



―御社の現在の事業内容についてお聞かせください。
靴磨きと靴の修理を行っています。

―ありがとうございます。「靴の修理」のお店はちらほら見ますが、「靴磨き」のお店とは大変珍しいように思います。それにやたらカッコイイ。「靴磨き」や「靴の修理」、これらの事業を始めるに至ったっ経緯をお聞かせください。
始まりは、大学在学中にまで遡ります。僕は、大学時代に学内にある「樹林カフェ」という社会福祉法人が運営するカフェで、その運営を学内のメンバーと一緒に手伝っていたんですね。そのカフェで、障害を持ったメンバーと出会ったんですよ。そのメンバーは、「一般就労が難しい」と言われるメンバーだったのですが、「彼らにも出来ることがたくさんあるんじゃないか?」と、僕はずっと感じていたんですね。そして、「障害のあるメンバーと学生が共に学びあう」ということをテーマに活動をしていたときカフェの店長が、「靴磨きっていいんじゃない?」とポロっと言ったんです。僕は、店長を信頼していたので、「店長が言うなら、やるだけやってみようかな。」と、そんな感じで靴磨きが始めりました。

―なるほど。大学時代に現在の礎が築かれたんですね。靴磨きのノウハウはどのように習得されたのですか?
靴磨きを始めると言っても、何のノウハウもないので京都駅の靴磨き屋さんに大阪のおしゃれな靴磨き屋さんを紹介してもらって、そのお店での修行の日々が始まりました。現在の弊社の副代表も含め合計6人で、修行へ行って技術を学び、戻ってきてカフェのオープン前の時間を使ってスタッフ達にその技術を教える。そんな日々が、1年半ほど続きました。

―なるほど。それから、現在の店舗を構えるまではどのような経緯がありましたか?
まずは、出張型の靴磨きサービスから始めたんですね。はじめは、大学の教授会からスタートしたのですが、色々なところへ出張させてもらいました。その中で、お客様と直接お話をしたり、メンバー同士が切磋琢磨して仕事に取り組むという経験をする過程で、どんどんスタッフの皆が成長していく姿を目の当たりにしたんですね。「このままで終わらせるのはもったいない。」当時の僕は強くそう思いました。その思いを、現在の副代表に打ち明けたところ、「挑戦しよう。」と言ってくれたんですね。それから、カフェの店長や教授、金融機関の皆様、現在の店舗の社長や店長にご支援いただいて、従来の「出張型」の靴磨きサービスと併せて、「店舗型」の靴磨きサービスを始めることが出来ました。

―ありがとうございます。「靴磨きのお店」というのは、イメージしやすいですが、「出張」というとどのようなところへ出張されるのでしょうか?
単純に、様々な業種業態の経営者の皆様から「従業員の靴を磨いて欲しい。」という依頼を受けて会社に出張サービスに伺うことが多いです。それが、最近では、会社に伺って皆様の靴を磨させてもらってるうちに、「社員研修をやってくれないか?」というお話まで頂けるようになったんですよ。

―社員研修ですか。とても興味深いのですが、具体的にどのようなことをされるのでしょうか?
どのような研修をするかというと、従業員の皆様に実際に靴を磨いてもらうんですよ。でも、ただ自分の靴を磨くのではなくて、「片方は自分で磨く。」そして、「もう片方は、隣の方の靴を磨く。」と、そんなことをやってもらうんですね。そうすると面白いことに皆様、ご自身の靴よりもお隣の方の靴を磨いているときの方が、一生懸命磨かれるんですよ。この靴を磨くという作業を通して、「与える喜び」を経験してもらっています。宣伝というわけではありませんが、この研修は、「社員の意識を一段階高めることに一役かっている。」と、ご評価頂き、皆様もご存知のような一流ホテルの研修にも採用していただいています。

―「与える喜び」を経験する。素晴らしい研修ですね。そんな魚見社長のスタッフの皆様への思いをお聞かせください。
はじめは靴の右と左を理解することさえ難しかったスタッフが、今では普通に接客出来ていますし、僕や副代表がいなくても彼らだけで店舗は運営出来ています。今となれば、靴に対しての思い入れは、ひょっとしたら僕や副代表よりも強いかもしれません。本当に頑張ってくれています。そんな彼らの人生がもっと豊かに楽しくなるようにバックアップしようと色々と計画しています。

―本当に素晴らしいことですね。この輪が無限に広がればいいのにと思います。会社の今後については、どのようにお考えですか?
ありがたいことに現在、靴の修理の依頼がどんどん増えているんですね。それに店舗内で対応しているんですが、追い付かないような状況になりつつあるんです。その状況を解決する意味でも、接客は出来ないけど靴を磨いたり修理したりすることが出来るスタッフに働く場所を提供するという意味でも、靴の修理工房を作ろうと計画しています。誰でもチャレンジしたいと思えば、チャレンジできる場所の提供。これについては、今後も積極的に取り組んでいこう。そう考えています。