アイカム 株式会社 常務取締役 平岡 慶大



―ご紹介者のアウトニーズの伊藤様から、テレビ局でプロデューサーを経験された後アメリカに渡ってMBAを取得して帰国されて家業のホテルに入られた方だと聞いています。何と言うかすごく華やかな経歴…。でもなぜ最初が家業に入るでもなく他のホテルでもなくテレビ局だったんですか?
現在のホテル・京都・ベースを始める以前は、祖父の代からホテルニュー京都というホテルを経営していました。私も物心がついたころには、ホテルの色々な式典に出たりしていましたので、その流れのまま家業に入りそうなもんですが、私は家業は継ぎたくなかったんです。高校生の頃には、自分で起業することを考え出していて、自分の人生は自分で切り開くと心に決めていました。高校生の当時は、自分で自分の道を切り開ける職業でお金持ちと言えば医者だと思っていたので将来は医者になろうと考えていたんです。でも、母の開業医をやっていた祖父が、ハードワークによって自分の命を削りながら患者さんの為に治療に当たっている姿を見るとちょっと違うかなと思うようになりました。そして、大学に進学して、迎えた就職活動の時期、就活そのものに違和感を覚えたんです。それから、親に会社を作ると言ったところ、祖父に反対され、「うちの会社に入れとは言わない。他の会社に入ってみろ。」そんな風に言われ、就職活動をはじめたんですが、むやみやたらにエントリーしまくるのではなく、「トップの会社にしか入らない!」そう決めて各業界でトップの会社にエントリーしていき、縁が合って入社したのが日本でトップのテレビ局だったんです。

―そのテレビ局ってHEY.HEY.HEYとかのテレビ局ですか・・・?そこで若くしてプロデューサーにまでなられたのにどうして辞められたんですか?もう少しいてもよかったんじゃないかななんて個人的には思うのですが?
確かに、ポジションや収入だけを考えるといてもよかったと思います。運でプロデューサーになったのではなく、入社して最初のバラエティ事業部では朝8時から次の日の朝4時まで仕事という超ハードワークの時期があって、それから、イベント事業部で海外を飛び回って仕事をして、最後の美術チームで美術の総合プロデューサーになるという風にがむしゃらに仕事に取り組んでキャリアアップしましたから。そして、いざプロデューサーになると周りからの当たりが変わったんです。私の親の年代位の方から接待を受けたりするわけです。私は、これが身に余るというか、とても強い違和感を覚えたんです。私は、中小企業の経営者の元に生まれたわけで、ひょっとすると私の親も私が知らないところで、私のような年下の人を接待して頭をさげてるんじゃないか?と考えるようになったんです。そう考えるようになってから、そろそろ家業に戻る頃かなと思うようになりました。

―なるほど。それから、渡米してMBAを取得して家業に入られるんですよね。MBA取得には何か理由があったのですか?
家業に戻ることを考え出したくらいのタイミングで祖父が倒れたんです。その知らせを受けて東京から京都に戻り、祖父の病室に向かい二人きりで話をしました。その時祖父から、「お前は、今の会社で社長になっても一生雇われの社長やぞ!お前は誰の孫や!」と言われたんです。そして、その一週間後、祖父が急逝したんです。それから、四十九日の時、父にテレビ局を退職して帰る話をしました。しかし、帰ってホテルに入り、習うより慣れろで仕事を覚えることも一つかもしれないけど、経営というものを学びたいからアメリカにMBAを取りに行かせて欲しいと言うと、まだ若いから行ってこいと父に快諾してもらったのでカリフォルニアの大学に進み2年間勉強してMBAを取得し帰国と同時にホテルに入りました。

―満を持してというか、ご経験の全てが今のホテル経営に繋がっているように感じます。現在、ホテルを経営するに当たり大切にされている考え方とはどのようなものでしょうか?
どれだけ働いてくれているスタッフが私達と一緒に同じ目線で物事を考えてくれるのか?ということですね。以前の私は、スタッフが経営者と同じ目線で考えるなんて無理だと思っていました。しかし、昨年の最初の緊急事態宣言時、約一か月半ホテルを閉めたことがあったんです。ホテルを閉めてもスタッフの給料は100%保証しようと社長と決めたのでホテルを閉めていた期間も給料は通常通り支払いました。経営者としては、当然の事をしたまでですが、この時に社員の皆からは、「ありがとう」という声をもらいました。それから、ホテルを再開してもお客様が普段通りお越しになられない状況が続きましたが、スタッフが観光マップを作ったり、周辺のかき氷マップを作ったりと自ら考え行動して自主的に仕事を見つけて作り出してくれるようになったんです。そして現在では、その成果をお客様への新しいサービスとして提供しています。

―仕事が無くてもお給料が頂けたということが全てでは無いとは思いますが、本当に素晴らしいことだと思います。暗い話の多いコロナ禍において数少ない明るいお話だと思います。では、お客様に対しては、どのような思いをお持ちですか?
当ホテルの設備は、他のホテルと比較して豪華と言う訳ではありません。一般的だと思います。そんな私たちが勝負できるのはサービスなんです。そして、そのサービスも経営者が決めるのではなく、日頃お客様と沢山接しているスタッフが考え出したサービスを提供するのが良いと考えています。私の方からスタッフに対しては、なるべくお客様のワガママには応えて欲しいと言っています。着物を着るから姿見が欲しいと言われれば買ってくればいいし、準備が出来ているならアーリーチェックインも受けるように言っています。

―ありがとうございます。今後、こちらのホテルをどのようにしていきたいですか?
「京都で一番のコンシェルジュは、ここホテル・京都・ベースにいる。」と言われたいですね。また、当ホテルにはホテル自体に体験を提供出来るような設備や施設はありませんが、宿泊者の皆様には、「ここに泊まったらこんな体験ができた!」「ここにまた泊まりたい!」と感じて頂きたいんです。その為に私達にできることは、先程も申し上げました通りサービスしかないんです。「このホテルは、設備は普通だけど、色々なことを教えてくれるし、何よりめちゃくちゃサービスいい!」なんて言われたら最高ですね。