喫酒 幾星 オーナー 織田 浩彰



―織田さんはどのような経緯でこちらのバーをはじめられたのですか?独立前はずっと同じ業界だったのでしょうか?
独立する直前はカフェバーで働いていました。それ以前と言うか、学校を出てしばらくは司法書士を目指して働きながら司法書士試験の勉強をしていました。しかし、思うような結果が出ず27歳の頃、司法書士の道に進むことに区切りをつけて、その時縁のあった飲食店に勤めることにしたんです。それから、カフェ・バーに移ってしばらくした2012年頃、独立しようかなと考えるようになったんです。というのも、私は自営業をしている両親の背中を見て育ってきましたので、ずっと会社勤めを続けるイメージが出来なかったんです。そんなことを考え出して、2年程経った2014年4月、ここ「喫酒 幾星」をオープンしました。

―なるほど。独立の前がカフェ・バーだったのに、独立する当たってはバー一本にされたのにはどんな思いがあったのでしょうか?
カフェ・バーに勤めていた時、あくまで個人的にですが何となくどっちつかずと言いますか中途半端なような気がしていたんです。一人で料理を作ったり、お酒を作ったりすることに何となくそんな思いを持っていました。ですから、いざ自分でやるならどちらかに絞ろうということでバーに絞ったんです。それに一人でやりたかったので。そして、バーをやるにしても、「お酒の知識や商品の知識を売る」か「マスターとの人間関係を売る」かを考えたとき、私は前者を選んだんです。

―「お酒の知識や商品の知識を売る」お店のホームページからも伝わってきます。2014年に独立されて8年目を迎えられますが、経営する上で大切にされている思いとはどのようなものでしょうか?
全て一人で淡々とやっていますので、大きな選択を迫られるような場面はないんです。これが組織なら経営理念などを元に大きな選択を迫られたとき判断するんだろうと思うのですがそういうことはありません。そんな私が大切にしているのは、このバーのコンセプトである「薬草リキュールのバー」ということを軸に、そこから派生的に出てきた様々なことを楽しみながら突き詰めてやるっていう事を大切にしています。また、「薬草リキュールのバー」というコンセプトからもご理解頂けると思うのですが、人があまりやらないことをやるのが好きなので、自分自身のそんな思いも大切にしています。

―昨年からのコロナ禍の影響をまともに受けられている業界だと思います。コロナ禍以前とは時間の使い方が随分変わったかと思いますが、現在はどのようなことに最も時間を使われていますか?
蒸留器を使用した抽出にはまっているんです。例えば、ハーブウォーターです。普通のハーブティーの約10倍~100倍くらいまで香りを濃縮した水を作るんです。また、この蒸留器を使って、まだまだメジャーではありませんがノンアルコールスピリッツも作っています。ノンアルコールスピリッツっていうのは、例えばノンアルコールのジンです。これらを使ったノンアルコールカクテルの開発をすることに今一番時間を使っています。

―ノンアルコールのジン等を使うとなると正真正銘のノンアルコールのジントニックとかが作れるってことですよね?正にお酒の知識や商品の知識を売るという感じですね。では、そんなお店にいらっしゃるお客様に対してはどのような思いをお持ちですか?
接客の仕事をしていると、「お客様は人につく」なんてことを聞いたりしますが、私の場合、あまり人ありきで来てほしくないんです。というのも、人ありきのスナックのマスターのような形式のお店だと新規のお客様は中々入りずらいですし、一度はお越し頂いてもそこが常連さんばかりの店だと2回目お越し頂くことは難しいように思います。それに、常連さんは長い目で見ると間違いなく減っていきます。ですから、いつでも新しいお客様はお越し頂けるように出来る限り人につかないように心掛けています。

―人につかないように心掛けるというのは意外です。正直、人についてなんぼ的な要素が強い業界だと思っていました。そんな思いは、スタッフの皆様へはどのようにお伝えされていますか?
「まずは利己を考えて欲しい。」そんな話をよくします。これは、自分の事だけを考えていればいいという意味ではありません。まずは、自分の心の健康にフォーカスして自分の心に余裕があると実感できる状態にならないと、お客様や自分以外の他者に対して利他は出来ないと考えているんです。

―僕もその通りだと思います。自分が健康じゃないのに利他なんて出来ないと思います。織田様はコロナの影響で制限を受け続けていらっしゃる現在でも蒸留器を使った研究など、モチベーションを高くキープされていると思いますがその源はどこにあるのでしょうか?
先程も少しお話しましたが、様々なことを楽しみながら突き詰めてやる。そんなことがモチベーションの源になっているように思います。新しいことが見つかれば、調べたり見に行ったりするのが楽しいですね。例えば、新しいハーブを見つけたら、生産者を訪ねて実際どのような環境や方法で栽培されているのかを見に行ったりします。

―本当にこのお仕事がお好きなんですね。本当に素敵だと思います。今後については、どのようなことをお考えですか?
ノンアルコールのドリンクをもっと考えていきたいと考えています。また、まだ先になると思いますがインバウンドが戻ったら海外旅行者の皆様を対象にカクテル作りや蒸留器を使ったワークショップを開催して、海外旅行者の皆様に対してアクティビティを提供したいですね。