株式会社 神戸珠数店 代表取締役社長 神戸 伸彰



―御社は、今年で創業103年。そして、神戸社長で6代目。相当な歴史ですね。物心ついたころから家業を継ぐことに抵抗なく自然な流れで入られたのでしょうか?それとも、違う道に進まれた時期があったのでしょうか?
小さい頃から継ぐもんだと思っていましたよ。小学校の文集でも、「将来は珠数屋さんになる!」って書いていましたから。でも、学校卒業後にすんなり家業に入ったと言う訳でもないんです。と言うのも、私は、高校時代から今でもバンドをやっているんです。それも相当本気で。そんな私が学生時代にアルバイトをしていたのは京都のライブハウスだったんです。ブッキングとかしているのがホント楽しくて、卒業後も1.2年はそのライブハウスでアルバイトをしていました。しかしながら、私には継ぐべき家業があり、いつまでもライブハウスでのアルバイトを続けるわけにもいかない訳で、そんなある日いよいよ、「どうするんや?」という話が出たんです。それをキッカケに家業に入りました。入ってから現在に至るまで、私の業務は営業に代表されるような対外的な活動です。私の父は私が19歳の時に逝去していましたので、長らく父の弟である伯父が社長を務めていたのですが、今から3年前。会社が100周年で私が40歳になる節目に代表に就任しました。

―今もバンド活動をされているんですね。それも本気で。こんな聞き方が良いのか分かりませんが、会社経営とバンド。似て非なるものなのか、それとも何かし通じるものがあるのかどうなんでしょうか?複数の人で構成された組織という視点で見るとどんなことを思われますか?
私が代表に就任してからの大きな取り組みの一つに「家業から企業へ。」というものがあります。私達の使命は、「珠数で人の心を豊かにする。」という事なのですが、そうするためにはまずは従業員の皆さんを幸せにしなければいけないと考えています。そして、そのためにまず働きやすい環境づくりに取り組んでいます。会社というのは人の集まりですから良いことも悪いことも色々なことが起こります。「会社を辞めたい。」なんて言われたときは、心が折れそうになりますが、そんな時はそれと同時に、「もっといい会社にしないといけない!」と強く思います。これからも「家業から企業へ。」という改革をしていかないといけません。そして、お互い尊重し合って、皆笑顔で働けて京都で一番ありがとうを集めることが出来る会社にしたいんです。こう思う背景には、バンドの影響もあると思います。ステージで演奏しているときに見るお客様の楽しそうな笑顔を見て、私達も楽しく笑顔になる。そして、その空間にいる全員で一つのものを作り上げる。これが好きなんです。バンドだけでなく、会社でもこんなことが出来れば最高だと思っています。

―会社組織もバンドも人との関りという点においては、近しいものがあるんですね。次に、内部ではなくお客様に対してはどのような思いをお持ちでしょうか?
弊社は、珠数の製造と卸をやっていますので、ビジネスとしては所謂BtoBのビジネスです。その為、弊社のお客様は全国の仏壇仏具店の皆様が中心です。その皆様には、「神戸さんに頼んだら大丈夫。」という安心を提供するように心掛けています。その安心と言うのは、納期、品質、対応のみならず、他社との差別化の方法や価格競争にならないような商品の見せ方に至るまでです。弊社のお客様の小売店様だけを見るのではなく、小売店様のお客様をしっかりと意識した提案をすることで、より一層の安心をご提供することを心掛けています。

―同じ目線というより一段階上の視点から同じ方向を見てアドバイスをもらえるというのはとても心強いと思います。社内外問わず情熱的な思いをお持ちのように感じます。しかしながら、そんな神戸社長でもモチベーションが下がる時があると思います。そんなときどうされていますか?
私も人間ですから、どうしてもモチベーションが落ちてしまうこともあります。そんな時は、仲間の頑張っている姿を見るようにしています。バンド仲間で自分で事業をしている仲間も多くいるので、彼らから色んな刺激をもらっています。また、弊社の従業員や職人さん達、そして仕入先の皆様を想像して「ここで俺が折れたらアカン!」と奮起しています。

―人の事を思い自身を鼓舞するというのは、素敵ですね。ホント。質問の色を変えますが、昨年から続くコロナ禍はどんな影響がありますか?
宗教用具全体がダメージを受けているのですが、中でも珠数業界のダメージは大きいと感じています。と言うのも、「密の回避」によって、お葬式が親族だけの小さな式になり、お寺や寺院の法要や式典も出来なくなりました。これによって、珠数が必要な場面が極端に少なくなったんです。そして、 「移動の自粛」によって観光客が街から消えました。観光客の皆様のお土産の一つとして珠数が選ばれることも多かったのですがこれも無くなりました。これによって売り上げは大きく落ちました。しかし、そんな中でも、どのように他社と差別化をするか、そしてこの局面からどのように浮上するのかと言う事を常に考えていて、どうやって弊社の珠数を知ってもらうかということを意識してプレスリリースやSNS、業界広告を積極的に行っています。

―ありがとうございます。最後の質問になりますが、今後についてはどのようなことをお考えでしょうか?
お葬式やお参りのときにだけ持つものと思われがちな珠数ですが、その起源はお守りなんです。成人や嫁入りといった人生の節目に親から子へ将来の健康を願って持たせる。そういう側面もこの珠数にはあるんです。珠数を持つことで、安心したり心が落ち着いたりする。そんな珠数を日本の皆様全員に持って貰いたいと考えています。冒頭でもお話しましたが、「珠数で人の心を豊かにする。」ということにこれからも取り組んいきます。また、企業としては、3年以内に業界トップシェアと取りたいと考えています。現在は、業界3位か4位あたりですが、差別化できる商品開発を意識しながら達成します。また、今までは従業員一人一人のマンパワーに依存することが多かったのですが、今まで個々で取り組んでいた仕事にチームで取り組むことで効率を追求していきます。そして、「家業から企業へ。」これを追求していきます。