レストラン 七番館 オーナーシェフ 折橋 正明



―ご祖父様が昭和4年に創業されたということは、今年で約93年。すごい歴史ですね。現在、折橋様で3代目とのことですが、家業であるレストラン七番館を継ぐことは小さい頃から自然な流れだったのでしょうか?
全然継ぐ気は無かったんですよ。幼い頃から将来は料理の世界に進みたいなんてことも考えていませんでした。しかし、大学を卒業するときにご縁あって就職先に選んだのがセンチュリーホテルだったんです。そして、配属されたのがフランス料理の部門だったんです。これが、私が料理の道を志すことになったキッカケです。センチュリーホテルで働き始めて7年程経った頃、それまではやっていたフランス料理よりも鉄板焼きが世間で流行り出したんです。これを受けて、センチュリーホテルも鉄板焼きに力を入れだしたのですが、私はもっともっとフランス料理の勉強がしたかったんです。ですから、当時ご縁を頂いたブライトンホテルへ移ることにしたんです。そして、そこでは8年程お世話になり、その中で山科駅前への進出する際のオープニングも経験するなど様々な経験をさせて頂きました。そんな時に、先代の父が事故に遭い、「帰って来てくれないか?」という打診を受けホテルでの修業期間に目処を付け家業に入ることになりました。そして、私が3代目として後を継いで今年で21年目に入ります。

―ありがとうございます。レストラン七番館のオーナーシェフになられて今年で21年とのことですが、現在、経営者として大切にされているお考えや信条とはどういったことでしょうか?
私は、料理人で職人気質なんです。ですから、頑固な一面もあります。私の周りの皆さんから、「人の意見も聞かなあかん。」とアドバイスを頂くこともあります。確かに雇われの料理人ではなく、オーナーシェフとして経営者としての側面も持ち合わせている訳ですからその通りだと思います。ですから、皆様のご意見やアドバイスをしっかりと聞いて受け止めますが、何でもかんでも言われた通りにはやらないようにしています。というのも、人の言う通りにやって上手くいかなかった場合、どうしても人のせいにしてしまうからです。やはり最終的には良くも悪くも自分ですから、しっかりと皆さんからの意見を受け止め熟考したうえで、最終的には自分の意思を貫き通すようにしています。

―ありがとうございます。昨年からのコロナ禍で随分時間の使われ方に変化があったのではないかと感じています。折橋様が今最も時間を使われているのはどういったことでしょうか?
私が家業を継いでから大体20年程経ちます。今改めて思い返すと、20年前に店を継いだ時の初心を忘れてしまっているような気がしたんです。ですから、初心を思い出すためにまた一からお店作りのこと、経営のことを見つめ直しています。その中で、新しい気付きも沢山あったので、コロナ禍で楽ではない時期が続いていますが、気づきを得ることが出来たと思うと良い側面もあったように感じています。

―辛い時期ではありますが、そんな渦中でも前を向き一歩一歩踏み出されたからこそ得られた気づきなんだろうと思います。次に、継がれてから今に至るまでで辛かった時期はありませんでしたか?また、その時どんな思いや考えで、その苦境と対峙されたのでしょうか?
家業に入る前に勤めていたブライトンホテルが山科駅前に進出するときにオープニングのメンバーとして行ったのですが、そのスタートアップの3か月間は今までの経験の中で最もきついかったです。休みなんて当然あるはずもなく、日々の睡眠時間は1時間程。これが来る日も来る日も続いたので体がどうにもならなくなってダウンしたんです。でも休めなくて、フラフラになりながら働いていました。そんな時期を経験したので、少々のことは何とも思わないんですよ。しかし、昨年から未だ続くこのコロナ禍はやはり笑っていられないです。と言っても悩んでいても仕方ないので、早々にカヌレというお菓子をテイクアウト用にリリースしてテイクアウト事業をスタートさせたんです。更にそれだけじゃダメだということで、真空パックのレトルトカレーの通販事業を始めるため現在着々と準備を進めています。

―動き出しが早いですね!すごいと思います!次に、お店にお見えになられるお客様に対してはどのような思いをお持ちですか?
「見た目よく、食べておいしく、食べた後にまたたべてみたい。」これをモットーにしています。そして、例えば、2,000円のお料理をお召し上がり頂いても4,000円以上の値打ちがあると感じて頂けるように一切の妥協をしていません。食材にもこだわりを持っていて、野菜は八木町の契約農家ら仕入れたりしています。「値打ちあるなー!」お客様にはそんな風に言って頂きたいですね。また、私は、フレンチ出身なのでお料理のソースについてお褒めの言葉を頂くと嬉しいですね。

―ありがとうございます。コロナ禍で下向きになりがちですが、どんどん事業を展開されるそのモチベーションの源とはどういたことなのでしょうか?
人に負けたくないんです。昔、ホテルを辞めて家業に入る時、「折橋が店をやっても潰しよる。」と言われていたんです。これを見返したい。そんな思いが私の根底にはあります。しかし、今となっては「折橋のとこ成功しててええなぁ。」と言われているようですが、これからは、そう言われ続けられるように驕ることなく直向きに取り組んでいきます。

―負けたくない気持ち。同じとは言いませんが分かる気がします。最後になりますが、これからの事をお聞かせください。
現在のコロナ禍も踏まえ先を考えた時、お店の売上がコロナ前の水準に戻ることは無いだろうと考えています。せいぜい戻っても、コロナ前の70% 程度だろうと思います。だから、その差の30%を何としてでも埋めようとするのではなくて、良い意味でゆとりを持って仕事をしようと考えています。ゆとりを持つと言っても売り上げを諦めるということではなくて、事業形態を時代にマッチさせて目標を達成した上でゆとりを作ろうと考えています。その為に、先程もお話しました真空パックのレトルトカレーの通販チャネルの立ち上げに取り組んでいます。そして、私は現在57歳ですが、65歳で七番館は次世代に承継し、私は自宅の前でフレンチの小さなお店を始めたいと考えています。