株式会社 インターナショナルパブリックアート 代表取締役 八木 ジン



―「アート」というと僕にとっては中々縁がないことなので、今日はどんなお話を伺えるのか楽しみにしています。ネット媒体を色々拝見すると、フォトスタジオやオンラインでのセレクトショップの他にもプロデュース業等色々なことをされていますが、一番最初は何で起業されたのですか?
一番初めの起業は、ロンドン大学院にいたときです。高い生活費を稼ぐために、ロンドンの街中で買ったアンティークをヤフオクで販売するなんてことを始めたのが起業の始まりでした。それが結構うまくいって、それから服のオンライン販売も始めたんです。こういうことって結果が出るまでにある程度の時間がかかりそうなものですが、2週間で売れ始めて1か月経つ頃には200万円ほどの売り上げが上がっていました。この時に、ネットに掲載する商品やモデルさんの写真を撮るために一眼レフカメラを買って写真を学び始めたんです。その後、大学院を卒業してロンドンから東京へ拠点を移し、輸入販売を継続し、順調に売り上げを伸ばしていました。このあたりの時期に、もともと母が代表を勤めていた株式会社インターナショナルパブリックアートにショップ事業部を作り、そのタイミングで私が代表に就任しました。それが2009年のことだったのですが、ショップ事業部を作ってすぐにリーマンショックがあって、さらにその2年後には東日本大震災がありました。この2つの大きな出来事によって売り上げがゼロになったんです。どんどん膨れ上がる借金と大量の在庫。この時期が本当に辛くどん底でした。そんなときに、友人から国民生活金融公庫で融資を受けたら?とアドバイスをもらって、初めてなりに必死で事業計画書を書き上げ800万円の融資を受けたんです。これで、借金も何もかもを一旦清算して再起を図るために京都に戻ってきたんです。

―勝手に、ずっとカメラを学ばれていたんだと思っていました。商品やモデルさんを撮られるために学ばれたんですね。しかし、代表に就任されてから険しい道のりをご経験されたようですが、そこからどのように現在のような様々な事業を展開されるまでになられたのでしょうか?
京都に戻り色々と見直していく中で、撮影の度にスタジオをレンタルするのはもったいないと思ったんです。こんなにスタジオを使うんだから自分のスタジオを作ろうということで、2015年に「LS STUDIO」を作ったんです。このスタジオは、私達が使っていないときはレンタルスタジオをして貸し出しているのですが、そうしているうちに、「カメラが出来るなら写真を撮ってくれないか?」と依頼を受けるようになって写真を撮り始めたんです。この時に、ロンドンでアートの勉強をしたことがメチャクチャ役に立っていることを感じました。今では、飲食店の店舗のリプロデュースなんて言うことも手掛けています。このようにオンラインショップだけ。カメラマンだけ。というようなことは考えておらず「これが出来るならあれもできるかもしれない。」というようなことを積み重ねた結果、現在のように多角的な事業展開を行っています。

―ありがとうございます。代表に就任されて約13年ほど経過しますが、現在経営者としてどのような思いをお持ちですか?
「社会とアートをつなぐ架け橋のような会社になりたい。」そんな風に考えています。現在の一般企業にはアートが足りていないように感じているので、そこにアートを足すお手伝いが出来ればと思っているんです。どういうことかと言うと、例えば年商10億円を達成した企業があるとします。その企業が次に100億円を達成するという目標を立てる訳ですが、この時に、「このままでは100億円を達成できないことは分かっている。でも、何をやったらいいか分からない。」となる訳です。私は、そんな時こそ必要なのはアートだと考えているんです。発想の転換をするにはアート的な考え方が不可欠な訳です。それに、芸術か事業かを問わず何か新しいことが出来た人と言うのは、「アーティストの領域に入った人」だと思うんです。ですから、一見アートと違う世界にいるように感じる一般企業の皆様にもアートと触れ合ってほしいと思います。

―ブレイクスルーする時には違う感性が必要というのはメチャクチャ納得です。では、クライアントに対してはどのような思いをお持ちですか?
何といっても、私はアートディレクションを出来ることが強みなんです。この強みを生かして、クライアントの事業にアートを注入して、その方が思いつかないようなことを提案することが私なりのクライアントへの貢献だと考えています。クライアントの事業にアートを注入と言っても、奇抜で斜め上のことを提案するのではありません。過去に売り上げの伸び悩んでいる焼肉店のRe:プロデュースをさせて頂いたことがあったのですが、お店の内装に私の得意とするアートの要素を入れるのは当然なのですが、それだけではなく、最近の若い年代はお酒を飲まない人が増えているという現状を踏まえ、ノンアルコールで思わず写真を撮りたくなるようなドリンクを沢山取り揃えたり、写真を上手く取り込んだメニューに作り直すというように、奇をてらった提案ではなく現実的、そして客観的で尚且つクライアントが発想できないことや思いつかなかったことを提案することが私の考える「事業にアートを注入する」ということの一つだと考えています。

―なるほど。しかし、色々なことをされていてすごいなと思うのですが、八木社長のモチベーションの源って何ですか?
単純に人に喜んでもらうとうれしいですよね。依頼を受けていた写真が出来上がって、それをクライアントに送って、その反応を待っているときなんてワクワクしてたまりませんし、写真を見てメチャクチャ喜んでくださったら本当に嬉しく思います。また、写真だけではなく飲食店のリプロデュースをさせて頂いて、お店の売り上げが上がったとかお客様が増えたと喜んで頂けることも本当に嬉しく思います。このように、クライアントが喜んでくださる姿を見たり喜びの声を聞くことが私のモチベーションとなっています。

―ありがとうございます。最後になりますが、今後のことについてお聞かせください。
まず考えているのが、アートディレクションのパッケージング化です。アートディレクションと言ってもイメージがつきにくいので、「500万円かけるとこういうことが出来ます。」とか「1000万円かけるとこういうことが出来ます。」とか、そういうことに会社として取り組んでいきます。また、個人的には、アーティスト活動をメインにしていきたいと考えています。クライアント企業から「八木ジンに頼めば、動かないことで有名な大物アーティストが動いてくれる!」とか、そういうことが言われるような存在になるための活動に力を入れていこうと計画しています。