出張さんばステーション聖護院・海(まある)助産所 代表 / 助産師 宮川 友美



―僕の知識不足で申し訳ないのですが、そもそも助産師さんっていうのはどういったことをされているのですか?産婦人科で妊婦さんや赤ちゃんの色々なお世話をする人なのか?と言うような漠然としたイメージなのですが。
助産師と言うのは、赤ちゃんが生まれることをお手伝いするだけでなく、産前産後のみならず各年代においての性の悩みであったり、女性のライフステージ全般においてサポート出来るパートナーのような存在なんです。でも、一般的には、病院の中で妊婦さんや赤ちゃんの色々なお世話をしているイメージが強いと思います。

―そうだったんですか!出産のタイミングでしかお世話にならないのが助産師さんだと思っていました。女性にとっては、そんなに長期的に関わりのある存在だったんですね。勤務助産師から開業助産師を目指されて、どのように現在のように独立されたのでしょうか?
病院に勤めて助産師をしていると、組織として大勢の妊婦さんと関わるので、どうしてもそれぞれの妊婦さんとは、「点」でしか接することが無いんです。一方、開業助産師は、一人の妊婦さんと多くの時間を過ごすので「点」ではなく「線」で接することになるんです。そういう接し方をすることで、女性が本来自分自身が持っている力を発揮しやすくなると思うんです。ですから、大げさかもしれませんが、開業助産師こそが本来の助産師のあるべき姿なんじゃないかなぁと思っていました。それから、私自身の妊娠と出産を開業助産師さんにサポートしてもらうという経験もしました。そして、私自身の妊娠に伴う産休や育休をしていた間に、「出産という命がけでする経験をして残りの人生は本当に自分のやりたいことをやろう!」と、思い切って2013年に独立しました。

―やはり、出産という命がけのことを控えている女性からすると助産師さんとはできる事なら点よりも線で関係を作りたいですよね。ママ友の皆さんとは、どんな話をされますか?助産師のママ友となると色々聞かれるんじゃないかと思うのですが。
産休や育休中に色々出かけてママ友と話をしていると、「仕事なにしてんの?」なんていう話になる訳ですが、その時に「助産師をしてる。」と言うと、本当に色々な質問や相談を受けるんです。そんなことを経験したときに、「これ、気軽に聞ける場所がホンマに必要なんちゃう?」と感じたんです。そのうちに、ママ友から「場所を用意するから、ママ友集めて話してくれへん?」とか依頼を受けるようになったんです。具体的にこういう依頼を受けるようになったので、「このまま独立してもやっていけるんじゃないか?私がそういう場所を作ろう!」と思って、独立の後押しにもなりました。

―ママ友の皆さんからするとメチャクチャ頼もしい存在ですね。次に、こちらに相談にお見えになられる皆様へはどのような思いをお持ちですか?
私のところへお越しになられる方は出産後の方が多いんです。そんな皆様の相談に耳を傾けていると、ここに自分の「悩みの答え」を求めていらっしゃる方が結構多いんです。でも、妊娠や出産に確かな答えがある訳じゃないんです。相談に来られる方が、それまでにやって来られたことや、これからしようとされていることに間違っていることはありませんので、ここに来られた方に対して私が出来ることは、どうしてそれをしようと思ったのか?ということを聞いていって、思いや考えを共有して、ご自身で「あ!私でいいんや!私のやり方でいいんや!」と気付いてもらうことなんです。このように、皆様には自分自身で気付いて頂けるような声掛けをするように心掛けています。

―コーチングですよね。すごいと思います。有名なコンサルは、クライアントに「こんなことならあなたのコンサルを受けなくても良かった。」と言わせたら勝ちだと言っていましたが、それに近いものがあると思います。では、独立されてから今までで辛かったのはいつ頃でしたか?
嘱託医の問題に直面した時です。私達、開業助産師は嘱託医か嘱託医療機関と契約をしないとお産のお手伝いが出来ないんです。開業してから、私も病院と嘱託医療機関の契約をしていたのですが、その契約が切れてしまったんです。契約が切れてしまったことで、お産を引き受けることが出来なくなって、収入がなくなってしまいました。この時が本当に辛かったです。「また、勤務の助産師に戻ろうか…。」ということも考えました。しかし、「宮川さんのところでお産がしたい。」と、仰ってくださる皆様がいらっしゃったので、断られても断られても病院を訪ねて契約をしてくれる嘱託医療機関を探していました。そういう活動を始めて約7か月程経った頃、ようやく契約をしてくださる嘱託医療機関が見つかり窮地を脱することが出来ました。

―ここで「助産師」と言うよりも「経営者」として伺いますが、現在経営者として一番大切にされている考えとはどのようなお考えでしょうか?
この場所を、ここに来られた人が、「来てよかった!」「また、来たい!」と、そんな風に思い感じてもらえるような場所にしたいと考えています。そう思ったり感じる人と言うのはサービスを受ける側だけではなく、この場所を利用してサービスを提供する側の人にも、そんな風に思ってもらいたいです。何と言うか、実家に帰ったときの何とも言えないほっこりする感覚をここでも味わってもらって、ここを出たときにエネルギーチャージ出来て、「来てよかった!」「また、来たい!」と思ってもらいたいんです。そんな思いを大切にここを運営しています。

―ありがとうございます。今の時代、こういう場所って本当に必要だと思います。自分が住んでいる場所にそういう場所があることを知ることが出来れば、もっと女性の皆さんの出産や育児に関する悩みが軽くなるんじゃないかとも感じます。最後にこれからのことをお聞かせください。
私達のような開業助産師が増えればいいなと思っています。その為に、一つ目は、私達助産師だけではなく、ママさんやパパさんも巻き込んで行政に皆様が助産師を頼りやすいような制度の改正を働きかけていきます。二つ目に考えているのが、後輩の育成です。私達助産師がいるのは女性を守るためです。これが本来守るべき根底にある考え方なのですが、どうしても病院に勤務しだすと日々の業務に追われてしまってそれが見えにくくなってしまいます。ですから、ここに勤務を始める前の助産師を目指している学生を招いて、悩みを持って訪れてきたお母さんが、ただ助産師と話しただけで、元気になって帰っていった。そんなお母さんの姿を見てもらいたいと考えています。